近年の海外投資及び国際間の人や物の移動の活発化に伴い、移住や財産の国外への移転、運用・譲渡及び国際相続・贈与も年々増加している。国際資産税の分野は、単に相続・贈与財産に国外財産が含まれる場合だけでなく、被相続人や相続人等が非居住者であった場合などの国際間の相続・贈与の問題のほか、国外財産の運用や譲渡...
近年の海外投資及び国際間の人や物の移動の活発化に伴い、移住や財産の国外への移転、運用・譲渡及び国際相続・贈与も年々増加している。国際資産税の分野は、単に相続・贈与財産に国外財産が含まれる場合だけでなく、被相続人や相続人等が非居住者であった場合などの国際間の相続・贈与の問題のほか、国外財産の運用や譲渡に伴う所得税等も含んだ広範かつ複雑でわかりづらい領域といえる。本書は、この「国際資産税」の分野について、網羅的にまとめた一冊。今版からは、弁護士法人も執筆に加わり、個人のクロスボーダーな税務・法務について、Q&Aを用いて具体的にわかりやすく解説する。
特色
●年々重要性が増す国際資産税について、その概要及び現況、国外財産把握のための諸制度や課税強化のための税制改正等を網羅!!
●ますます複雑化・難解化する個人のクロスボーダーな税務・法務について、Q&Aを充実し、具体例でわかりやすく徹底解説!!
●海外投資家や富裕層・資産家、また国際資産税に携わる税理士・国際弁護士・プライベートバンカーなどの専門家や金融機関関係者必携の書!!
主要目次
第1部 税務当局の国外財産の把握と課税に係る対応強化
第1章 国外財産把握に係る現状の制度の概要
1 国内法における国外財産把握に係る制度
(1) 国内法における国外財産把握のための制度の概要
(2) 国内法における各制度の提出実績
(3) 質問検査権の行使による情報収集
2 租税条約に基づく情報交換の概要及び実績
(1) 租税条約等に基づく情報交換の実施状況
3 最近の租税条約の改正や締結交渉の状況
第2章 国際資産税に係る課税強化
1 国際資産税に係る近年の課税強化の概要
(1) 国外転出等をする場合の譲渡所得等の特例の創設
(2) 相続税・贈与税の納税義務者の範囲の改正
(3) タックスヘイブン対策税制の改正
2 税務当局の体制の強化
(1) 資産運用の多様化・国際化を念頭に置いた調査
(2) 国際的な租税回避に対する取組み
3 国際資産税に係る近年の税務調査実績
(1) 富裕層への対応(所得税関連)
(2) 海外投資等を行っている個人に対する調査状況(所得税関連)
(3) 海外資産関連事案に係る調査事績(相続税関連)
4 税務行政執行共助条約の締結とその対応
(1) 税務行政執行共助条約の締結とこれまでの経緯
(2) 条約への署名国
(3) 税務行政執行共助条約及び改正議定書の概要
(4) 税務行政執行共助条約締結に伴う国内法の整備
第2部 国際資産税の基礎となる日本の税制と関連諸制度
第1章 日本の所得税
1 納税義務者の区分と課税所得の範囲
(1) 居住者・非居住者の定義
(2) 住所・居所の判定
2 所得の種類と課税の方法
(1) 居住者に対する課税
(2) 非居住者に対する課税
3 租税条約
(1) 概要
(2) モデル租税条約
(3) 租税条約の主な内容
(4) 租税条約の適用を受けるための届出
(5) BEPS防止措置実施条約
4 国外転出等をする場合の譲渡所得等の特例
(1) 制度の趣旨・背景
(2) 国外転出時課税制度の内容
(3) 国外贈与等時課税の内容
5 外国税額控除
(1) 制度の概要
(2) 外国税額控除額の計算の概要
(3) 適用対象となる外国所得税の範囲
(4) 控除限度額の計算に係る近年の改正
(5) 外国所得税額の邦貨換算
(6) 外国税額控除の適用時期
(7) 外国税額控除の繰越控除
(8) みなし外国税額控除
(9) 外国税額控除の適用を受けるための手続
6 タックスヘイブン対策税制(外国関係会社に係る所得の課税の特例)
(1) 制度の概要
(2) 外国関係会社の定義
(3) 納税義務者
(4) 特定外国関係会社又は対象外国関係会社に係る合算課税(外国関係会社単位の合算課税)
(5) 経済活動基準
(6) 部分適用対象金額(受動的所得)に係る合算課税(部分合算課税)
(7) 合算課税に係る適用免除
(8) 配当等があった場合の二重課税の調整
(9) 外国関係会社に係る財務諸表等の確定申告書への添付
7 コーポレート・インバージョン対策合算税制(特殊関係株主等である居住者に係る外国関係法人の所得の課税の特例)
(1) 制度の概要
(2) 適用対象となる外国法人の範囲
(3) 納税義務者
(4) 合算の対象となる所得の計算
(5) タックスヘイブン対策税制と重複した場合
8 国外財産調書制度
(1) 制度の概要
(2) 国外財産調書の提出義務者
(3) 国外財産の意義(対象となる財産及びその所在地)
(4) 国外財産の価額
(5) 国外財産調書の具体的記載事項と様式
(6) 罰則等
9 国外証券移管等調書制度
(1) 制度創設の概要
(2) 対象範囲
(3) 告知書の提出等
(4) 金融商品取引業者等による国外証券移管等調書の提出
(5) 様式
10 財産債務調書制度
(1) 財産債務調書制度の概要
(2) 財産債務調書の提出義務者
(3) 対象となる財産及び債務と具体的記載事項と様式
(4) 財産の価額・債務の金額(評価方法)
(5) 国外財産調書との重複関係
(6) 罰則等
11 日本国外に居住する親族に係る扶養控除等の書類添付義務
(1) 改正の経緯、趣旨
(2) 内容
12 共通報告基準(CRS)に基づく金融口座情報の自動的交換のための報告制度
(1) 制度の背景・趣旨
(2) 特定取引を行う者の届出義務
(3) 報告金融機関による特定及び報告義務
第2章 日本の相続税・贈与税
1 納税義務者の区分と課税財産の範囲
(1) 居住無制限納税義務者
(2) 非居住無制限納税義務者
(3) 居住制限納税義務者
(4) 非居住制限納税義務者
(5) 特定納税義務者
2 住所の判定
(1) 住所の判定の原則
(2) 国外勤務者等の住所の判定
3 財産の所在判定
4 相続税・贈与税の計算
(1) 相続税
(2) 贈与税
5 国外財産の評価
6 外貨建て財産・債務の邦貨換算
(1) 邦貨換算の原則
(2) 先物外国為替予約を締結している場合
(3) 課税時期に為替相場がない又は複数ある場合
7 債務控除及び未成年者・障害者控除
(1) 債務控除
(2) 未成年者・障害者控除
8 外国税額控除
(1) 概要
(2) 相続税の外国税額控除
(3) 贈与税の外国税額控除
(4) 外国税額の邦貨換算
第3章 国際相続・贈与
1 各国における資産税制の概要
(1) 諸外国の相続税率の概観
(2) 相続税・贈与税以外の財産に係る税金
2 日本と諸外国の相続税制の相違
(1) 各国における相続税制の位置づけ
(2) 各国の相続税の課税方式
(3) 近年における日本の相続税法の改正の影響
3 国際私法の概要
(1) 概要
(2) 「法の適用に関する通則法」が適用される局面
(3) 相続統一主義と相続分割主義
(4) 「反致」の例
(5) 相続に関する実体法の考え方
(6) 実務における対応順序
4 相続税に係る租税条約
(1) 相続税及び贈与税に関する租税条約の現状
(2) 相続税条約の締結が少ない理由
(3) 日米相続税条約
(4) 日米相続税条約の内容
5 国際相続・贈与における相続税・贈与税の申告と計算
(1) 国際相続における相続税計算の考え方
(2) 日本と米国の相続税の課税パターン
(3) 国際相続における申告手続の実務
(4) 国際贈与の考え方
第3部 国際資産税Q&A
第1章 納税義務者区分の判定
Q1 生活の本拠が日本となる場合の住所の判定(所得税・相続税)
Q2 生活の本拠が海外となる場合の住所の判定(所得税・相続税)
コラム 所得税法上の住所が取り上げられた裁判例
コラム 相続税法上の住所が取り上げられた裁判例
Q3 留学中の住所の判定(所得税・相続税)
Q4 在日外国人の納税義務者区分の判定(贈与税・相続税)
Q5 二重国籍者の納税義務者区分の判定(贈与税・相続税)
Q6 国籍離脱者の納税義務者区分の判定(贈与税・相続税)
Q7 納税猶予適用期間中の贈与における納税義務者判定
第2章 居住者の国際投資に係る所得税
【1 外貨預金】
Q8 外貨建定期預金満期後の預替えに係る課税関係
Q9 外貨建預金による外国不動産の取得
Q10 国外銀行口座での預金利息の受領
【2 外国公社債の利子】
Q11 国内の証券会社等を通じた外国公社債の利子の受領
Q12 外国証券会社の国外口座での外国公社債に係る利子の受領
【3 外国株式の配当】
Q13 国内の証券会社等を通じた外国上場株式の配当金の受領
Q14 外国証券会社の国外口座での外国株式の配当金の受領
【4 外国公社債の売却・償還】
Q15 外国公社債(利付債)の売却
Q16 外国公社債(利付債)の償還
【5 外国上場株式の譲渡】
Q17 外国証券会社の国外口座での外国上場株式の譲渡
Q18 投資一任口座(ラップ口座)
【6 LLC・LPSの収入】
Q19 米国のリミテッド・ライアビリティー・カンパニー(LLC)からの分配
Q20 外国のリミテッド・パートナーシップ(LPS)の利益の取込み
【7 国外不動産の賃料収入・譲渡】
Q21 国外に保有する不動産からの賃貸収入の収受(国外不動産所得が発生するケース)
Q22 国外に保有する不動産の譲渡
Q23 国外に保有する中古建物から生じた損失の損益通算
【8 生命保険・年金】
Q24 国外で締結した生命保険契約による満期返戻金(一時金)の受領
Q25 国外で締結した生命保険契約による年金の受領
Q26 外国政府からの外国公的年金の受領
【9 タックスヘイブン対策税制】
Q27 個人のタックスヘイブン対策税制
コラム タックスヘイブン対策税制は租税条約に違反するか
【10 暗号資産】
Q28 暗号資産から所得を得た場合の課税関係
Q29 暗号資産による所得に係る確定申告書等の提出
【11 国外資産管理会社から受け取る所得】
Q30 国外の資産管理会社から所得を得た場合の課税関係
【12 外国税額控除】
Q31 外国税額控除の計算
第3章 海外移住後の日本非居住者の国内源泉所得に係る所得税
【1 預金】
Q32 預金利息の受領
【2 公社債の利子・譲渡】
Q33 公社債の利子の受領
Q34 公社債の譲渡
【3 上場株式の配当・譲渡】
Q35 上場株式の配当の受領
Q36 上場株式の譲渡
【4 国内不動産の賃料収入・譲渡】
Q37 国内不動産からの賃料収入の収受
Q38 国内不動産の譲渡
【5 生命保険・年金】
Q39 生命保険の満期返戻金の受領
Q40 死亡保険金の受領
Q41 公的年金の受領
【6 役員報酬】
Q42 日本法人からの役員報酬の受領
【7 非上場会社の利子・配当・株式譲渡等】
Q43 日本法人からの貸付金利子又は社債利子の受領
Q44 非上場会社からの配当の受領
Q45 非上場株式(事業譲渡類似株式)の譲渡
Q46 非上場株式の外国法人への現物出資
Q47 国内の資産管理会社の解散
【8 確定申告・租税条約の適用手続】
Q48 非居住者の国内での確定申告方法
Q49 租税条約の減免規定を適用する場合の実務手続
第4章 国際相続・贈与における相続税・贈与税計算の実務
【1 相続税計算・納税義務の判定】
Q50 無制限納税義務者が国外財産を相続する場合の相続税計算
Q51 制限納税義務者が国外財産を相続する場合の相続税計算
Q52 相続人に無制限納税義務者と制限納税義務者がいる場合の計算事例
Q53 外国の財団への遺贈
【2 財産の内外判定】
Q54 外国の生命保険会社と締結した生命保険契約に係る死亡保険金
Q55 外国の信託会社の信託受益権
Q56 国外送金による現金の贈与
コラム 国外送金した場合の贈与税に係る財産の所在
【3 国外財産の評価・為替換算】
Q57 国外不動産の評価
Q58 国外で相続税に相当する税が課せられた場合の評価
Q59 外国株式の評価
コラム 贈与に係る住所の判定と非上場外国株式の評価
Q60 外貨建ての財産の邦貨換算
【4 外国税額控除】
Q61 外国税額控除の対象となる外国の相続税・贈与税
Q62 第三国に所在する財産に係る二重課税と日米相続税条約
コラム 相続税法上、外国税額控除の対象となる外国税額の範囲
Q63 外国税額控除により控除しきれない外国相続税
Q64 外国税額控除の適用タイミング
【5 特例その他】
Q65 国際相続における小規模宅地等の特例の適用
Q66 米国の遺族年金の受給権に係る相続税の課税関係
Q67 国際相続における相続時精算課税制度の適用
第5章 国際資産税の実務において留意すべき諸外国の制度
【1 国際私法の適用】
Q68 相続における国際私法の適用の局面
コラム 国際相続における納税義務者該当性
【2 夫婦財産制・ジョイントアカウント】
Q69 夫婦財産制の概要
コラム 夫婦財産契約と所得の帰属
Q70 ジョイントアカウントに係る課税関係
Q71 ジョイント・テナンシーに係る課税関係
コラム 海外不動産の贈与(米国カリフォルニア州のジョイント・テナンシー)
【3 外国信託】
Q72 米国のGRATに係る日本の相続税法の適用
コラム 米国で設定した信託の贈与税課税に関する裁判例
Q73 海外の受託者が日本の贈与税課税を受けるケース
【4 国外財産報告義務制度】
Q74 海外における財産保有状況の報告義務
第6章 財産の海外への移転及び海外移住
【1 海外移住の手続・留意点】
Q75 海外移住のための手続
Q76 海外移住の留意点
【2 日本の資産の海外移転】
Q77 日本国内で保有する金融資産の海外への移管
Q78 国内不動産の国外資産管理会社への譲渡
Q79 海外に移住する際の国外転出時課税(出国税)
Q80 海外移住後の日本法人株式の譲渡
Q81 国内非上場会社の三角合併によるコーポレート・インバージョン
【3 国外転出時課税制度に関する留意点】
Q82 非居住者に贈与・相続により有価証券が移転した場合の国外転出(贈与・相続)時課税制度の適用
Q83 国外転出時課税の納税猶予を適用する場合の手続(贈与・相続)
Q84 国外転出時課税の対象となった株式の譲渡における株式譲渡益課税及び相続税の取得費加算の特例
Q85 国外転出時課税の対象となった株式を出国後に譲渡した場合の取扱い